訪問介護の賃金・キャリア設計講座(処遇改善加算・昇給・賞与・経営)
区分2 処遇改善加算★★★月額賃金改善要件で出てくる基本給等とは、基本給と、決まって毎月支払われる手当のことです。 なお、加算を請求して受け取れる状態にすることを、この講座では「算定」と呼びます。 資格手当や役職手当のように、毎月同じ条件で出る手当は、ここに入ります。
これに対して、賞与や一時金は、毎月は出ません。 同じ金額を払っていても、「月給の形で払う」のか「年に数回まとめて払う」のかで、要件の判定が変わります。
ベースアップとは、賃金表そのものを改訂して、基本給などの水準を一律に引き上げることです。 昇給とは別の物です。昇給は「その人が年数や評価で上がる」こと、ベースアップは「賃金表が全体に上がる」ことです。
国の通知では、新しく基本給などを上げる場合は、ベースアップによることを基本とする、とされています。 つまり、特定の人だけを上げるのではなく、賃金表を書き換えて全体を上げるのが原則です。
| 言葉 | 何のことか |
|---|---|
| 月額賃金改善要件 | 加算の一部を、毎月の賃金(基本給等)に充てる要件 |
| キャリアパス要件Ⅲ | 昇給の仕組みを書面にする要件(No.04)。キャリアパスは、働く人の役割と賃金が上がっていく道筋のこと |
| 職場環境等要件 | 働きやすい職場づくりの取組を行い、公表する要件 |
月額賃金改善要件は「お金の払い方」、キャリアパス要件は「書面の整備」、職場環境等要件は「職場の取組」です。 3つとも、区分によって必要かどうかが決まります(No.03の対応表)。
月額賃金改善要件の中身は、次のとおりです。
処遇改善加算Ⅳの加算額の2分の1以上を、基本給等の改善に充てること。
Ⅳ以外の区分を算定する時も、基準は同じです。「仮にⅣを算定したとしたら見込まれる加算額」の2分の1以上を、基本給等に充てます。 なぜⅣの率(17.0%)で計算するのかというと、この要件は、どの区分でも同じ物差し(Ⅳ相当額)を使う決まりだからです。上の区分に上がって加算額が増えても、毎月の賃金に充てる最低額は、Ⅳ相当額の半分のまま変わりません。
No.01の架空の事業所(月の本体報酬200万円)で見てみます。ここは特定事業所加算を取っていない段階の例です。特定事業所加算Ⅱ(10%)も取る場合は、率を掛ける対象が220万円になり、Ⅳ相当額は37.4万円、その半分は18.7万円です(No.07)。 区分Ⅳの加算額は、200万×0.17=34万円です。この半分、月17万円以上を、基本給等の改善に充てることが要件です。
区分Ⅰイ(加算額54万円)を算定していても、基準になるのはⅣ相当の34万円の半分です。 つまり、この要件だけを見れば、54万円のうち17万円以上を毎月の賃金にして、残りの37万円は賞与や一時金などで払ってもよい、ということになります。 ただし、2026年度に新しく増えた加算額には、別のルール(ベースアップが基本)があります。この点はNo.06で扱います(後で出ます)。
この要件は、「賃金の総額を新しく増やせ」という意味ではありません。 すでに加算を算定している事業所は、一時金や手当で払っていた分を減らして、その分を基本給等に付け替えれば、要件を満たせます。
たとえば、賞与で配っていた分を、毎月の資格手当に移す、といった形です。 すでにこの要件を満たしている事業所は、新しい取組をする必要もありません。
ただし、加算を新しく算定し始める事業所は別です。この場合は、実際に賃金を新しく増やす必要があります。
この要件を満たすために、新しく基本給等を引き上げる場合は、ベースアップによることが基本です。 一部の人だけを上げるのではなく、賃金表の書き換えで全体を上げます。
○ よくある勘違い:古い資料に出てくる「月額賃金改善要件Ⅱ」(旧ベースアップ等加算の相当額の3分の2以上を月給で改善する要件)を、いまも必要だと思ってしまう。2026年度の通知には、この要件の記載がありません。令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の要件は1つだけです
職場環境等要件は、働きやすい職場づくりの取組を、決まった数だけ行う要件です。 取組は、国が示した28項目の中から選びます。次の5つの区分と、生産性向上の取組に分かれています。 生産性向上とは、記録のICT化や業務の見直しで、仕事の手間を減らすことです。
必要な取組の数は、区分で違います。
| 5つの区分 | 生産性向上の取組 | |
|---|---|---|
| Ⅰ・Ⅱ(イ・ロとも) | それぞれ2つ以上 | 3つ以上(うち⑰か⑱は必須) |
| Ⅲ・Ⅳ | それぞれ1つ以上 | 2つ以上 |
⑰は生産性向上のガイドラインに基づく体制づくり、⑱は現場の課題の見える化です。 Ⅰ・Ⅱなら、2×5+3=13の取組が必要です。Ⅲ・Ⅳは1×5+2=7の取組で足ります。
これが、Ⅰ・ⅡとⅢ・Ⅳで必要な取組の数が大きく違う、という「重い」「軽い」の中身です。
生産性向上の取組には、2つの例外があります。
もう1つの条件が、公表です。Ⅰ・Ⅱでは、取り組んだ内容を、外から見える形で公表します。 具体的には、介護サービス情報公表制度(介護事業所の情報を載せる国の公開サイト)の「事業所の特色」の欄に、取組の項目と中身を書きます。
小規模な事業所は、公表の手間を見落としがちです。 計画書を出す時に、公表の準備も一緒に進めておくと安心です。
取組を選ぶ時は、すでにやっていることを数えるのが近道です。 たとえば、実務者研修の受講支援は、資質の向上に向けた取組の項目に入っています。キャリアパス要件Ⅱのb(資格取得の支援・No.04)と重なる所が多いので、同じ取組を、両方の要件の証拠に使えます。
国は、取組の事例集も出しています。 ただし、キャリアパス要件や職場環境等要件のために使った費用は、賃金改善の額には含められません。加算は賃金に回し切るので、取組の費用は別に用意しておく必要があります。
月額賃金改善要件は、Ⅳ相当額の半分以上を基本給等へ。総額を増やさず、賞与などから付け替えてもよい。職場環境等要件は、Ⅰ・Ⅱで13取組・Ⅲ・Ⅳで7取組が目安で、Ⅰ・Ⅱは公表も要る。取組の費用は賃金改善に入れられない。
自社の賃金設計シートに書くこと(「処遇改善の配り方」の欄)
○ 自社の「Ⅳ相当額(本体報酬×17.0%)」と、その半分(毎月の賃金に充てる最低額)
○ 今は一時金で払っている分のうち、毎月の手当や基本給に付け替える額
○ 社労士・指定権者(事業所を指定した市や都道府県)に聞くこと:今の手当が「決まって毎月支払われる手当」に当たるか
問1 月の本体報酬が200万円(他の加算なし)の事業所が、区分Ⅰイ(27.0%)を算定します。月額賃金改善要件で、基本給等に充てるべき最低額は?(Ⅳの率は17.0%)
問2 すでに加算を算定している事業所が、月額賃金改善要件を満たすための方法として正しいのは?
問3 区分Ⅱロを算定する訪問介護事業所の、職場環境等要件として正しいのは?
出典:厚生労働省「令和8年度 介護職員等処遇改善加算の基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(老発0313第6号、本文2・3、別紙1表4)https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/6_tsuuchi_kihontekikangaekata_jimushoritejun.pdf / 令和8年度 処遇改善加算Q&A(第1版)の問1-5(介護保険最新情報Vol.1479、新宿区掲載の写し)https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000451055.pdf / 2024年度の旧要件(月額賃金改善要件Ⅱ)の資料 https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/A1_info_B.pdf / 職場環境等要件の事例集 https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/r7_jireisyu.pdf 。確認日 2026-11-04。