訪問介護の賃金・キャリア設計講座(処遇改善加算・昇給・賞与・経営)
はじめに訪問介護の賃金というと、「処遇改善加算をどう配るか」の話だと思われがちです。 でも加算は、賃金の原資の一部にすぎません。加算を配る前に、そもそも売上がどう決まって、そのうち何割を人に払えるのかが決まっています。
ここを飛ばして加算の要件だけ覚えると、こうなりやすいです。 要件は満たしているのに、毎月の資金繰りが苦しい。昇給を約束したら、あとで原資が足りなくなる。職員から「なぜ私はこの額なのか」と聞かれて、答えられない。
どれも、加算の知識が足りないのではありません。 売上・人件費・加算・賃金表が、1本の線でつながっていないことが原因です。
この講座では、その線を自分の手で引けるようにします。 労務の知識は、必要な所でその場で説明します。詳しく知りたい時は、別の講座「小さな会社の労務講座」(https://course-roumu.pages.dev)の単元を指します。
講座の中では、次のように言葉をそろえます。 先に読んでおくと、後の単元で迷いません。
訪問介護の賃金制度(等級・昇給・賞与・処遇改善の配り方)を、加算の要件と事業所の売上・人件費につなげて、自分で設計し、職員に説明できること。
制度の細かい条文を全部覚えることは、目指しません。 合格の目安は、聞かれた時に「どこを見れば答えが出るか」「自社の数字ならいくらになるか」が分かることです。
「自社の賃金設計シート」を1枚作って、職員向けに5分で説明します。 シートには、自社の賃金表(等級・基本給・資格手当)と、処遇改善加算を年度内に配り切る計算を入れます。
シートの中身と書き方は、次の単元「学び方」で説明します。 各単元の終わりに、その単元で埋める欄が出てきます。読み進めるうちに、No.13までに材料が揃い、No.14で職員への5分の説明の骨組みを作ります。
訪問介護の賃金の話は、広げようと思えばいくらでも広がります。 そこで、ゴールに効くかどうかで仕分けて、効かない物は思い切って外しました。
外して大丈夫かなと不安になるかもしれません。 でもこれらは、自社の賃金表を作る時にほぼ使いません。必要になった時に、社労士や公式の資料に当たれば足ります。
この講座の加算率や要件は、2026年11月時点の通知(令和8年度=2026年4月〜2027年3月に使う分)によるものです。 加算の率と要件は、改定で変わります。毎年、厚生労働省の最新の通知と資料で確かめてください。
加算の率は、2026年度の途中(6月分)に改定されました。そして2027年度には、介護報酬の定期改定が予定されています。 2027年度の改定の中身は、2026年11月時点でまだ決まっていません。決まっていない物を、この講座で先回りして書くことはしません。
だから講座では、数字そのものを覚えるより、「どの数字を、どこで確かめるか」を身につけます。
講座は、実際に賃金制度を作る順に、4つの区分で並べています。 各区分の目標と攻め方は、トップページの「この区分の攻め方」にもあります。ここでは、区分ごとに何をするかを短く説明します。
最初の2単元は、お金の出どころです。 売上は、サービスごとに決まった点数(単位)に、地域ごとの1単位の円の値(地域の単価)を掛けて、国が決めます。人件費がその売上の何割かを見れば、払える賃金の上限が言えるようになります。
数字が出てきますが、掛け算と割り算だけです。区分1は、他の全部の根っこになります。
次の4単元で、加算の中身を読みます。 自社がどの区分を取れるか、そのために何を書面で整えるか、受け取ったお金をどう配るか、役所に何をいつ出すかです。年度が終わったあとに出す報告書(実績報告)で、約束どおり配ったかを確かめられます。
要件が多く、区分の中でいちばん読むのに時間がかかります。表にして印を付けながら進めると、迷いません。
ここは、自分で決める所です。 賃金を「本体の売上で払う1階」と「加算で払う2階」に分けて考えます。この「2階建て」は、この講座の呼び名で、法律の言葉ではありません。そのうえで、等級・昇給・賞与・登録ヘルパーの時給を、賃金規程に書ける形で決めます。
正解が1つではないので、決める軸を先に分けて考えます。
最後の3単元は、これまでの総まとめです。 特定事業所加算(体制の整った事業所に付く別の加算)と資格手当の関係を見て、加算や人数が変わった時に賃金と利益がどう動くかを試算します。最後に、決めた制度を職員に知らせる手順と、賃金を下げる時の手順を作ります。
ここで、自社の数字が1枚にまとまります。
出典:厚生労働省「令和8年度 介護職員等処遇改善加算の基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(老発0313第6号)https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/6_tsuuchi_kihontekikangaekata_jimushoritejun.pdf / 厚生労働省 処遇改善ページ https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/index.html / 2027年度改定が未決定であることは、第259回介護給付費分科会(国が介護報酬の改定を議論する会議)の訪問介護資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716093.pdf の議論中という記載による。確認日 2026-11-04。